今回の制作は I 様からのご依頼で、まん点工房製レジン製ガレージキット・1/72スケール「12式装甲歩行戦闘車改」の制作です。
なお改造内容が多いため、ページが長くなっております。以下のリンクで各項目にジャンプします。完成写真・胴体制作・腕の制作・脚の制作・武器の制作
まず最初に準備です。設定画集め・キットのチェック・組立説明書を熟読などを行います。
古いキットですが気泡や収縮や段差は少なめ。油分の滲み出しも少なめ。ただしバリが凄いです。
丁寧にランナーからパーツを切り離し。粗めにバリ取り。パーツ番号や左右などの刻印。離型剤に一晩浸け置き、中性洗剤と研磨剤とブラシでゴシゴシ。超音波洗浄機。乾燥させて仮組みに入ります。
仮組みして制作の段取りを行います。以降は部位ごとの制作風景です。
胴体の制作です。頭部、主翼、小翼も含めます。
胴部はシンプルな作りです。ディテールの作り直しがメインです。
首の可動はシンプルなのですが各パーツの落ち着きが悪く安定性が出ないので、プラ板やネジを使ってしっかり固定できるように加工しました。
インテーク部分です。ここも基本通りまずはパーツの位置の調整を行なってから、整面・ディテールを行います。またインテークの枠はフチを薄く加工しました。
メインノズルの仮組み。可動も含めて基本的な構成なので、何度も調整しつつ進めます。
ほぼ完成。ノズルの昇降も問題なく可動します。
主翼は引き出し&折りたたみ可動。デザイン的に強度の確保に限界がありますので、その強度を落とさないように最小限の加工で済むように段取りします。
主翼がほぼ完成しました。
主翼の折りたたみ機構はキット準拠で作りました。各部のすり合わせを慎重に行うことで強度をアップ。また水平にしたとき強度不足だったので固定ピンを追加。
カメラ撮影が未熟なため、色合いにバラつきが出てしまって申し訳ありませんです。
つづいて小翼の制作です。
小翼は、 垂直翼・肩・ワキシリンダーの3ブロック構成です。やはり肉厚が薄いので加工するにも限界があります。ともかくレジンの肉厚の強度が落ちないように慎重に組み立て手順を段取りします。
オシリにはディスプレイベースに接続するマウント穴があります。まずはマウント穴径をキレイにしてジョイントとの強度を確認。それからディテールとフタを制作。
ヒジから下ほぼキット通りですが、肩と上腕の関節は完全改修になりました。
問題の肩関節です。キットとしてまったく強度がたりないうえに、元のデザインの関節位置が特殊な形なので、改修案に時間がかかりました。
途中かなりの試行錯誤をしました。最終的に関節として信頼実績のあるガンプラから関節を移植。取付面の整面や強度用ブラケット取り付けなどなど。
上腕関節の軸を太くするなどしています。
強度・可動範囲とも改修することが出来ました。
フレームが決まったら、あとは表面処理です。
僕はガレキでもプラモデルでも、まず脚から制作します。特に脚裏と地面の接地状況の確認が大切で、ここの取り回しによって身体全体の体幹とポーズが決まります。
足首から下の部分。タイヤは固定なので見えない部分でしっかり固定し、見える面を整形します。
太ももと股関節です。まずはキットどおりに組んでみます。太めのポリキャップなのでノーマルのままでも自立できる強度があります。できれば関節強化を行いたいですが、スペースに限りがあるので改修するにも制限があり、下手にすればかえって強度を落とす可能性もあります。
どうしてもネックになっている防塵カバーをオミットし、関節露出にします。その結果、レジンパーツの肉厚を確保しつつ大きい関節を仕込むことが出来ました。同時に可動機構も合理的で可動範囲も広くなりました。
まずはしっかり立つようになりました。膝関節はシンプルで問題なし。
全身を仮組みし、自立できることを確認。構造部分の確認が終わったら、表面処理やディテールの加工に入ります。
大きい気泡はまるごと切り取ってプラ板やパテを充填。整面やエッジを出していきます。
ノーマルの足首関節は強度不足でまったく使えないので、根本的に作り直します。
強度を確保するために硬めのプラ素材でマウントを作り、そこに実績信頼のあるボールジョイントを仕込みます。
これで股関節から下、足全体の関節が確定しました。
制作は楽しくもありますが、解法がきまっていない懸案事項になかなか正解が出せないときもあり「これはどんなに考えても物理的に不可能なのでは・・・」と精神的に不安になるときもあります。でもいつも諦めずに艱難辛苦を乗り越えて納得できる工作ができたとき、強い手応えと満足感を感じます。
おおきい気泡は、大胆に周辺をカットして安定した素材で作り直したほうが早くてきれいに仕上がります。
細かいディテールはいったん削り取って個別に作成します。
レジンで思い機体をタイヤで支えるデザイン。それにしてはタイヤの配置の狭さと強度が足りなかったので、マウントから一つ一つ作り直しました。
細かいディテールはいったん削り落とし、面取りを行なったあと、新造したディテールを付加していきます。
バリが多いので、整面・サフ・整面・サフの繰り返しがメインです。
僕は「死んでいるディテール」と呼んでるディテールがあります。機能的意味が分からなかったり、入り口があるのに出口がなかったり、統一感を崩していたり、模型的縮尺が破綻していたり。このハンドカノンは、そういった「死んだディテール」を整理したり作り直したりがメインになりました。
ディテールを残したまま整形するか、分割したほうがいいか、判断しながら制作します。ここはマガジンなのでもともと脱着する構造なので、迷わず切り離しました。
整面・サフ・整面・サフの繰り返しで面やエッジをだしていきます。
整面が終わりました。これからディテールを追加していきます。
メタルパーツやプラ材を適所適材に配置していきます。
だいぶバランスがよくなってきました。
右腕への装着感もピッタリです。
左腕アタッチメントの調整が難しいですが、それ以外はベーシックな工作だと予想します。
バルカンの砲身はプラ材で新規に作り直しました。ヤスリがけするよりも早くて綺麗にできたと思います。
やはり整面・サフ・整面・サフの繰り返し。ディテールの追加を行います。
左腕への装着も確認しました。
仮組みも出来ないくらいバリが多かったので、おもったよりも結構時間がかかりました。またこの武装は本体&アームに装着する構造のため、完成は一番最後になりました。
ハンドル状の部分は切り落としてプラ棒に変更。ディテールの整理などなど。
「メイン砲身のボリュームアップ」のご要望により、プラ材から砲身を作り直しています。レシーバーブロックが小さい上に複雑なパーツ構成なので、砲身のサイズが限られているのが悩みどころです。
何本かの試作を作った結果、太さと長さが決定しました。
ボリュームアップ砲身のほぼ完成形です。下にあるのがノーマルの砲身です。だいぶ大きくなり、迫力が出ました。
右手、胴体下部、左手の三点支持になります。
左手のグリップは脱着できるようにしました。左手に装着する場合はグリップを取り外して軸棒を差し込むことで固定できます。
右グリップも同様に脱着式に。
一体成型一発抜きになってますが元のデザインがシンプルなので、形状の修正や穿孔などを行いました。
バリ、ゆがみ、パーツ欠け、などなど。とにかく地道に修正を行います。
やはりバリ・ゆがみ・気泡を処理。パイロンとブラケットの接続を真鍮製で行います。
ブラケットの厚みが1mmもないので、0.5mm真鍮線を使いました。荷重はないので強度は十分です。
パイロン装着系ウェポンも完成しました。
予定よりも時間がかかってしまいましたが、納期に余裕をいただけたので助かりました。初めての機体で色々と勉強することもできたし、無事に完成して良かったです^^。
みなさまに、楽しい模型ライフを!