HiRM ハイレゾリューションモデル・ウイングガンダムEWを制作しました。
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HiRM ハイレゾリューションモデル・ウイングガンダムEWです。これまでの純正ガンプラでは見たことのない思い切ったアレンジになっています。最近は「細くて直線的なデザイン」が流行ですが、このキットは真逆の「曲面で筋肉質」です。自分の好みのデザインなので、キットのコンセプトを活かす方向で制作を開始しました。
仮組みしてみると、通常のガンプラと違い「半分トイフィギュア・半分プラモデルの半完成品」といった内容で、一長一短のあるクセの強いキットでした。フレームが完成状態だったり、塗装しなくても色分けできてたりと、ライトモデラーを対象にしてるようです。
しかしフレームは強度が弱く、外装パネルは精度イマイチで組み立てにくく、ポロポロと外れてしまう。そして試行錯誤してるうちにフレームやパネルが破損してしまう。さらに1/100スケールで14800円という高額を考えると、これは上級者向けのキットだと感じました。
通常のガンプラとは制作方法が大きく異なりますが、一つ一つの部品をしっかり理解して、丁寧に強度を確保しながら制作すれば、本来このキットが目指したハイレゾな仕上がりになるだろうと思いました。実際の制作ではかなり苦労しましたが、しっかり安定した完成品にすることができました。
いろいろと厳しい意見を言いましたが、こういうチャレンジの精神あるのキットは個人的には好きなので、今後もぜひ継続してほしいシリーズです。
それではここから制作風景です。
フレームはシステムインジェクション+工場の人の手作業組立+一部塗装済で、写真のように半完成状態になっています。このタイプの半完成フレームは「金型がスゴイ」というインパクトはある。また、フレームを組み立てる時間を短縮できるのは初心者・ライトモデラーにはメリットなのだろうと思います。
しかしポリ系の柔らかい素材なので精度が悪く、加工も接着も塗装もできないのでプラモデル本来の「作る楽しみ」が半減してしまう。個人的には従来のABSやKPSのフレームのほうが自由度があって好きです。
頭部含めて全身のアウターパーツは、塗装しなくてもほぼ色分けができるようになっています。そのぶんパーツが細かくなるので、組み立ては少々難しいです。耳ウイングの緑矢印部分はスイング開閉するギミックがありますが、仕込みのスペースが小さ過ぎてポロポロと外れてしまうので、オープン状態固定に仕上げます。
ウイングガンダムは象徴的イメージが強いので、パステル系で彩度高めの色を調色しました。
設定画とは違うカラー配置もあり、さらにそれを自分の好みに調整するので、ディテールや色のバランス取りにはとても時間がかかりました。
首の可動域は自由度が多く、もともとのポジションも良い感じで、いつものような位置調整は必要ありませんでした。
つぎに腕の製作です。
半完成フレームは出来るだけ分解して処理します。離型剤を脱脂し、表面処理して、プライマーを塗布し、塗装します。ポリ素材に対して最大限の下地処理をしてますが、それでも剥がれてしまう可能性もあります。その対策として、素材と同じ色で塗装をすることで、もし剥がれてしまってもほとんど目立たないようにしました。
肩のパーツも色分けが素晴らしい。可動部分も多いけどポロポロ外れて実用的ではなので、しっかり固定していきます。
胴体の制作です。
フレームにはダイキャスト製金属パーツ(メタリックのパーツ)も組み込まれています。これがしっかり接着されていて分解が難しかった!ダイキャストのバリを取りたいのですがダイキャストは加工ができないので、プラ側を加工調整することで精度をアップしました。
パーツごとの細かな調整が終わったら組み立てます。背中に重いウイングを背負うと腰が曲がってしまうので、ネジや自作ブラケットでしっかり固定しました。
ウイングガンダムは重量バランス的に自立はできないので、ディスプレイベースで浮かせて展示します。ベースと接続するマウントはグラグラと揺れるので、貫通ネジを通してしっかり固定。
胸中央のセンサーはクリアーグリーンパーツが接着されていて、透明度もキレイで悪くはないです。個人的にはもう少し大きくしたかったので、自作のセンサーレンズと丸皿モールドに交換しました。周辺の金属パーツも精度が悪かったので、削りに苦労しつつ整えました。
フレームの補強が終わったら、アウターを取り付けていきます。レイヤー構造、スキマの大小、並行ラインのズラシ具合など、すごく絶妙なデザインになっています。ほんとうにすごいセンスのいるアレンジだと思います。
今回は浮かせてディスプレイするので、アオリ目線(下から目線)で見える部位にも気を使うようにしています。
このキットは元デザインから大きく変更されている部分もあります。そのため設定画と同じ色配分だとバランスが悪く感じるパーツがあります。このリアアーマーは本来は青とグレーの2色でしたが、青白グレーなど5色以上で塗り分けにしました。
ノーマルのウイングガンダムに比べてパーツ分割や塗り分けが多いので、殆どの色を新規に調色しました。
同じくフロントアーマー・サイドアーマーも塗り分けを増やしました。
腰アーマーは可動が多く設定されていますが、自重で垂れ下がってしまいます。必要な可動は補強しつつ、一部はネジで固定にしました。
制作がかなり変則的で試行錯誤に夢中になっていたので、製作途中の写真を取り忘れている部分が多いです。上半身も細かく色々と改修していますが、基本的には「分解・調整・補強・塗装」の繰り返しなので、細かい制作内容は省略しましす。
続いて足の制作です。
キットノーマル状態。アウトラインやスキマをピッタリに揃えるのは簡単です(いや簡単ではないが、指標はシンプル)。逆にこのキットのようにあえて不揃いにズラすのは、可能性が無限にあるので、センスよく仕上げるのは非常に難しいです。何度も言いますが、このキットは絶妙なデザインになっていると思います。キットでは金型制限等でボヤッとしてるラインがあるので、デザイナーの意図を読んで丁寧に整えていきます。
差し色などの配色も変更しました。とはいえ自分でカラーバランスを取るのはとてもむずかしいです。なんども塗り直しをしつつ、おおむねイメージ通りになりました。
ヒザは連動ではなくフリー可動。アグレッシブなデザインなので、フリー可動のほうが自由に表現できて良いですね。
足の甲のジャケットは塗り分けを変更し、可動を固定に。足裏は素材の制限があるので、できる範囲内で加工・塗装・ディテールアップを行いました。
●フレームの破損
あきらかにフレームの素材不足&強度不足を感じたので、製作中はかなり慎重に扱ったのですが、股間の関節が自然にひび割れしてました。軟質樹脂なので修理はほぼ不可能です。自分はもともと可動はさせず、ベストプロポーションでディスプレイするのが好きなので、今回は固定で仕上げることにしました。
関節を固定するともう動かせない、失敗ができないです。なのでどのアングルで固定するかがとても重要になります。また左右対称も大切です。正確性を高める補正具として定規・分度器・方眼紙・投影・デバイダーなどいろいろ方法がありますが、今回はレーザーを使って角度を決めました。
ネジ固定にしたので、ネジを外せばまた可動させて再調整することもできます。ただし何度も加工すると素材の強度が落ちるので、できれば一発で決めるのが理想です。
つぎに背中ウイングの制作です。
キットは強度を保つためかスナップフィットが非常にキツめになっている場合があります。キツすぎて最後までハマらなかったり、いちど押し込むと外すことができない。
なのでスナップフィットは全部ユルユルに解除し、最後の仕上げでネジや接着で固定するようにします。こういった処理を全身に行っています。
ウイングの開閉は強度が十分だったので可動を残しました。
ランドセルとの接合可動部。ウイング中央のスタビライザー(青部品)の可動。
ウイングが完成しました。
塗装やデカールが終わったパーツは、トレーに入れてホコリ防止カバーをかけて保管します。
次にシールドです。
もともと複雑に入り組んだデザインで、このキットでも複雑なパーツ構成になっています。パーツ同士のフィットの調整は「微調整」でも良くなりますが、結果的に全体的に作り直す感じにしたほうがより精度が高くなりました。パーツ分割が細かいおかげで、塗装は効率よく行えました。
通常はシールドは左手持ちですが、今回は個人的な理由で右手持ちに変更しました。この改造は後述します。
【余談】
自分は、完成品はほとんど可動させません。ベストポーズでディスプレイしたあとはほとんど触りません。そのため、ディスプレイしたときにそのモビルスーツの特徴が出るアングルをイメージして制作しています。そしてガンダム系は左手にシールドをもたせると、本体がほとんど見えなくなってしまいます。
今回は早い段階で「左半身をメインにディスプレイする」と決めていたので、シールドを右手に移動することも決めていました。そうすれば左側は本体のシルエットが見えるし、右側は重装備を楽しむことができるようになります。また今回のように浮かせてディスプレイの場合はアオリ目線(下から見上げる目線)で見える部位にも気を使うようにしています。
【余談おわり】
ここからライフルの制作です。
エネルギーパックは取り外し可能なのですが、そのせいでガタガタするので、固定するパーツを作ってます。
こういった「ユルユル・ポロポロ・ギシギシ」対策を全身に行っています。
ライフル本体はガンプラ定番の構成なので詳細は省略します。センサー多重塗装やメタルパーツ埋め込みなど定番工作。
ここから「右手がライフルを保持できない」「ライフルの角度が不自然」「シールドを右手ライフルにラッチさせる」の改造を同時に行っていきます。
ライフルのグリップを切り離し、切断面の角度を調整して、ライフルの構え角度が適切になるように調整。
グリップの切断面をライフル本体に再接続。さらにグリップの底面はシールドに固定できるようにしました。上下で固定してるので非常に強度が出ています。
シールドのフレーム部分です。右腕やライフルに自然に落ち着くように、フレームを2つに切り離したり削ったり足したりしてます。なお黒マジックで下書きしてるところにライフルグリップ底面が取り付きます。
ライフルとシールドの重さがあるので、グリップ+手首だけでは強度不足。プラ材からブラケットを新規作成します。完成後に見えなくなる部分を利用しています。
非常に限られたスペースですが、出来るだけブラケットに強度を持たせるように形状を工夫しました。失敗すると直しが効かない、強度の再確保が難しいので、何十回と仮組みして慎重に加工しています。
製作中の効率化はもちろん、完成後もメンテナンスがしやすいように、ブラケットは開閉可動&取り外しできるようにしました。
ライフルとシールドと右腕がガッチリ一体化。写真では伝わらないですが、強度カチカチの安心感がすごいです。
苦労のかいがあり、ライフル&シールドを持たせることができました。
完成が近づいてきました。通常のガンプラと比べるととても難しいキットで、予想の何倍も時間がかかりましたが、そのぶん達成感も大きかったです。
写真では伝わりませんが、ノーマルと改造後を比べると「糸こんにゃくと拳銃」くらいの強度の違いがあります。慎重にやればフル装備で自立も可能です。
HiRM ハイレゾリューションモデル・ウイングガンダムEW、完成しました♪
文中で「左側のショットをメインで制作」と書きましたが・・・
右からのショットも意外と良かった!
※最後に。
このキットの弱体を素直に書いてきましたが、でも良いキットなのは確かです。時間さえあればウイングガンダムゼロ(羽根バージョン)も作ってみたいです。HiRM ハイレゾリューションモデルは、ぜひ今後も継続してほしいシリーズです。
みなさまに、楽しい模型ライフを!