紙ヤスリの番手について

 2016.00.00 記
2017.12.29 改定
2021.05.01 誤記修正
2023.11.21 写真修正

 

■答えづらい質問だった。

「紙ヤスリは何番を使ってますか?」というご質問が多いのですが、いままで返答にに悩んでいました。

一般的に知られる「教科書どおりの方法」は初心者には正しいアドバイスです。しかし僕はまったく違う使い方(経験と理論)があります。僕の方法のほうが現実的で安定したヤスリがけができます。しかし基礎から外れた方法なので、初心者の方には分かりづらく、かえって混乱させたら申し訳ないと思い、返答ができなかった。

でも「ヤスリの番手」なんて世の中にいくらでも情報がある中で、わざわざ僕に質問したということなら、それにお答えするのが自然かな、と思うようになりました。改めて文章にしてみると、紙ヤスリの重要な性質なのでぜひ(理論だけでも)知ってほしい、と感じました。

 

 

■新品の紙ヤスリは使わない。

基本的に新品の紙やすりは使いません。なぜなら「#400をかけた」といっても、#400が#400なのは最初のほんの数秒だけだからです。あっという間に切削力が落ちていき、だるい面になってしまいます。新品のヤスリは不安定要素が多くて使えないのです。

だから僕は、使い古して安定した紙やすりを使うようにしてます。例えば#180を使い古し実質#320で安定になったものとか、#400を使い古して実質#800で安定したもの、といった感じです。そうすると新品よりも安定した切削力が得られます。

「まめに新品に交換すればいい」というのも危険性があります。新品のヤスリはときどき大きい粒があって、#400なのに#180くらいの深い傷を作ることがあります。これは致命傷で、修正するのに何倍も時間がかかります。特にクリアパーツの研ぎ出しで失敗経験した人も多いと思います。

また、紙やすりは力のかけ方や方向によって±200番くらいの違いが出ます。ですから同じ#400でも人によって削れ方が大きく変わります。この場合も新品のほうが振れ幅が大きく、削りが不安定になります。ただし「使い古し」も人によって状態が大きく変わるので、やはりアドバイスとしては難しい。

以上のような理由で「紙ヤスリは何番ですか?」の質問に対し「#400です」のような単純な回答ができなかったのです。現実の制作では10年以上、使い古しを信頼して使用しています。

 

面出し・直線&曲線エッジ出し。新品よりも使い古した紙やすりのほうがコントロールしやすい。

 

これは決して節約が目的ではありません。まず新品ヤスリを当て木にセットして、不要なプラを削って、意図的に使い古しを作り出します。複数作ったのち、安定してるものを実用で使います。使用後はブラッシングもしますので、新品よりもコストや手間がかかります。

もちろん必要に応じて新品を使います。新品を使う場合は10秒ごとに交換するペースです。生乾きのパテなど目詰まりしやすい切削の場合に新品を使います。

 

■まとめ

●番手を指定しても、人によって削れ方が全然ちがうので、アドバイスにならない。
●新品より使い古しが安定してる。そのことを意識して使ってみてください。
●初心者の方は、とりあえず新品の180と400で感覚を掴んでください。次に#800かな。
●#1000以上は不要。よほど熟練してないと正しい使い方はできないと思います。

 

 

 

 

みなさまに、楽しい模型ライフを!