エアブラシの選び方

2019.05.17 初出
2023.07.29 一部修正

 

エアブラシの性能や選び方は、メーカーカタログや雑誌等を読めば「ほぼ」正しい情報が得られます。しかしそれはあくまでカタログスペックであり、実際に使った感覚はまったく違うものです。そこでエアブラシ経験40年以上で得た自分なりの「エアブラシを選ぶときの考え方」を記します。

 

いきなりですが結論から言うと「エアブラシの良し悪しについては、使ってみないと分からない」です。それが僕の本気の本音です。

 

 

 

エアブラシのスペックはバラバラ

●口径0.3mmを10本くらい使ってきましたが、どれも風量&塗料量ともにバラバラです。感覚的に0.17mm〜0.6mmくらいのバラツキがあります。なのでカタログスペックはまったく参考になりません。

●同じ0.3mmでも「塗料ミストの粒の大きさの違い」があります。感覚的に粒の大きさが3倍くらい違います。これはグラデーション塗装で大きく影響します。ちなみに僕の使っているエアブラシの中で一番ミストが細かいのはWAVE製スーパーエアブラシJr HT-031です。ただしこのジュニアは生産休止。後継機のジュニア2は構造が変わったのでエア質も変わったと予想→その後2022年にジュニア2を買いました。性能は大きく変わりました、まだ慣れてないので良いとも悪いとも言えません。

●エアの安定性の違い。エアブラシ内のエアの取り回しが上手にできているかどうかで、エアの安定性に違いがでるようです。しかし内部構造の情報はほぼゼロなので選びようがないです。ちなみに、手持ちの中ではTAMIYAスプレーワーク HG トリガーエアーブラシ(0.3mm ITEM 74510)がエア&塗料ともに安定しています。なのでコレを2本持ってます。3本目も検討中(2021年3本目を購入しました。はやり性能&安定性良好です)

●全く同じエアブラシでも、コンプレッサーや塗料や住んでいる地域(気温やHz)が変われば、体感できるほどエアの出方が変わります。でも「そこまで神経質に考えろ!」ってことではなく「カタログスペック見比べてもあまり意味ないよ〜実際に使って調整するのが大切」っていうことです。

 

たとえば上の写真。表面処理の精度がぜんぜん違いますよね。これ国産メーカーの1万円以上のエアブラシを2個買ったときの、スライドカムです。同じ型番の同じエアブラシなのにこんなに違うんです。「買ってみないとわからない」と言うのは、こういうことです。(たぶんこれはメーカー側の品質改善の結果だとおもいます。性能アップでお値段そのまま、素晴らしい!です)

 

 

ガンプラでの使用感

●口径の大小で塗面の仕上がりが変わるかというと、ガンプラの場合はほとんど変わらないです。塗面の仕上がりは口径よりも「エア圧と塗料」「使う人の技術力」のほうが大きく影響します。0.5mmでも練習すれば細吹ができるようになります。0.2mmで広い面を塗るのは効率悪いですが、可能ではあります。

●ガンプラの場合は0.3mmがオススメです。しかしそれは0.3mmが性能的にベストということではなく、0.3mmは流通が多くて価格が安い、使いやすくてメンテもしやすいなどのメリットが強いのでオススメです。まあ0.3はオールマイティになんでもこなせるから必携ですね。

●1/60や巨大キットなど面が広い場合は0.5mmが良い。メタリックやサフも0.5mmのほうが詰まりにくくて吹きやすい。なので1本目を0.3mm、2本目を0.5mmにするのがオススメ。

●0.2mm以下の細吹きはガンプラでは必要ないかなぁ。自分は0.2mmも持ってますが、ほとんど使用してません。米粒くらいのパーツに3色でグラデをいれるなどで使用。0.2mm以下は「たくさん練習したけど0.3mmじゃどうしても太すぎてダメ」ってなってからの購入で良いと思います。

 

 

このエアブラシは15年以上使ってます。道具を大切にする心が大切。

 

 

その他の細かいけど重要なこと

●エア経路が複雑なモノは、たいていエアが不安定で使いにくくなります。例えば簡易レギュレータ付きエアブラシなどは僕はオススメしません。エアブラシ本体はできるだけシンプルに。エア圧はちゃんとしたレギュレータとメーター読みで行いましょう。

●デザインが奇抜なモノ・流行り物は使い良かった試しがありません。オーソドックスでシンプルなものを。

●ニードルキャップ(一番先端の部品)の形状による性能の違いについて。うがい洗浄するときに便利なので「普通のすり鉢型」を好んで選んでいます。クラウンや穴あきは「うがい」が面倒なのでNG。また近接塗装をするときはキャップを外して行うので、クラウンや穴あきの必要性を感じません。

●本体色は黒かシルバーメッキを選びます。カラーメッキされていると眼が色補正されて、正確な色を判断できなくなるからです。

●長時間塗装する場合、押しボタン式のエアブラシだと指が痛くなります。そんなときは人差し指じゃなく親指で押すと良いです。さらに長時間(連続30分以上)塗装することが多い場合はトリガー&グリップ式がオススメです。

●新品の吹き味はあまり参考にならない。数回の塗装と最初の全分解洗浄が終わったあたりで、実務的な性能になる。そして使っていくうちに性能が変化していきますし、使う人によってクセの付き方が変わっていきます。なので「エアブラシ開封レビュー」みたいなのはあまり参考にならない。1年5年10年使ったレビューなら参考になります。

●オリンポスや岩田など老舗メーカーは性能的信頼はあるのですが、メンテ部品の入手に手間取るのが難点です。TAMIYAやクレオスやWAVEは、流通が安定してるというメリットが大きいです。

●海外製激安エアブラシも、自分でメンテ&加工する技術があれば便利です。ウレタンやプライマーなどは固着が怖いですが、激安なので使い捨て感覚で使えるのが良いですね。(とうわけで初心者さんにはオススメできない)

●以前は初心者さんに向けて「すぐに使えるエアブラシ&コンプレッサー(10万円くらいのセット)の無料貸出」をやっていました。が、2023年現在は1万円以下で全部揃うので、悩むなら買ったほうが幸せになれると思います。

●最近(2023年頃)流通してる「充電式エアブラシ」はまだ使ったことがないのでわかりません。電源コード不要なのは気軽で良さそう。

 

 

まとめ

というわけで45年の経験の結果「とりあえず買ってみる」という買い方をしております。現在はだいたい2択で、有名メーカーの定番品を安心して使うか、または激安品を加工しながら使っています。そして実際に使ってみて個性をしっかり把握した上で「吐出の多いものはサフ用、ミストがキレイなものはグラデ用」のように役割を与えて使い分けてます。

話したいことはまだまだたくさんありますが、今回はこのへんで。

 

 

 

 

みなさまに、楽しい模型ライフを!