※ネタバレ的で、精神的で、面白くない記事です。読まないほうが良いです。
学生の頃はミリタリーや実車やガンプラやフィギュアなど、あらゆるプラモデルを作ってました。「ウェザリング」「よりリアルに」などの工夫をするのが楽しかったです。
社会人になってから、好きが高じて某重工業で自衛隊戦闘機の実機をいじる仕事に就きました。MILの青焼き図面を見て興奮し、自分で図面を描き、自分で実機に取り付ける。自分が作った部品が今でも空を飛んでいます。その後も米軍基地のすぐ近くに引っ越して毎日ジェット音の振動を感じ、少し電車に乗れば海自&潜水艦も見られる。総火演で陸自を見て、実銃を撃ちたくて海外に行く。常に本物に近づこうとしていました。
特に戦闘機設計&整備では、いままでどんな本にも載っていなかったような、現役戦闘機の内側や信号線の一本一本、そして機密や不具合までも見てきました。本物を観て、触れる乗れる興奮でイッパイでした。これを模型にフィードバックしたらよりリアルになるに違いない。そう思っていました。
やがて、バイブルのように信じていた「模型情報誌のリアル」と「本物のリアル」がまったく別物だと知ってしまいました。それは結構ショック(寂しさ?)でした。毎月数冊買っていた模型誌を、買わなくなってしまいました。
ならば自分が情報を発信しようとも思ったのですが、当然「機密」なので他人に話せない。現場で得た知識を自分の模型に表現することも「漏洩」というリスクと責任感のほうを強く感じてしまう。また、公開してもいいような「現場あるある」なども、ネタバレのような感じになってしまい、熱い空気を冷たくするだけでした。そんなこともあって「リアルを求めて模型をつくる」という探究心が崩壊してしまいました。
同じように自動車の競技や整備に夢中になった時期があり、「メカ欲」「汚れ」はリアルのほうで満足していました。なので車や飛行機などのスケールモデルは40年間制作してなかったです。ときどき「ガンプラだけじゃなくスケールモデルも作ったほうがいいよ」とアドバイスもらえるのですが、板挟みになった感じで辛かったです。「リアルを求める」「リアリティが無い」といった言葉は、僕にはトラウマになっていました。
そんなわけでガンプラの立ち位置がちょうどよかったです。元が空想メカなので物理法則を無視してもいいし、自衛隊の現場で得た知識や経験もガンプラならば活かすことができる。
ところで、40年も封印していたトラウマを突然のように書いたのは、なぜか?
友達から飛行機のプラモデルをもらった。これがキッカケになりました。
食玩のような簡易なキットですが、僕にとって40年ぶりの飛行機模型でした。これをつくったとき、たしかな「楽しい!」を感じました。精度もリアリティも低いですが、だからこそ逆にプレッシャーがなく、楽しみだけを感じることが出来た。F117 ナイトホークの製作記はこちら。
スターウォーズのプラモも40年ぶりに作りました。プロップも劇中も、こんなに汚れていないのを知っています。でも僕の中のミレニアムファルコン号は、これくらい汚れているのです。僕はこれでイイんです。ミレニアムファルコンの製作記はこちら。
バイクはいじったことがない、このフレームもどっちが上か下かも分からない。バイクのリアルを知らないからこそ、ミスも精度も気にせず純粋に楽しめた、そして構造の勉強になった。NSR500の製作記はこちら。
当時の自衛隊系重工を退職した後も、数年〜十数年は秘密保持の責任がありました。なのでこの話題自体ができなかった、それも辛かったです。ですが、あれから30年たち、今はもうそういった責任も契約期間もなくなりました。ようやくこの話ができるようになりました。「リアルを知ってる人は、リアルを求める必要がない」
長年のトラウマがやっと寛解したと感じてます。これからは気軽な気持ちで飛行機や車のプラモも作っていきたいと思うようになりました。あと戦車も船もF1もバイクも電車もお城も。たのしみが一気に増えました。
メモ
・僕の個人的な体験談です。いうまでもなく、楽しみ方は人それぞれ。
・スケールモデルや模型誌を否定する意思はないです。
・本気のスケールモデラーを尊敬してるし、いつも勉強させてもらってます。
・模型誌は限定された情報の中から「楽しい」を配信してる。それはともて正しい。
・実機と模型について一番感じたのは「実機はそれほど厳格ではない、結構アバウト」
・模型を本物のように撮影する技術は、いますぐ欲しい(ずっと撮影スランプ中)
・今回はけっこう精神的な部分なので、共感やご意見いただけたら嬉しいです。
おわりです。
みなさまに、楽しい模型ライフを!