MG ゼータプラスC1

作品番号 W07

 

 

制作依頼を頂いておりました、MG ゼータプラスC1 です。19年前のキットの素性を活かしつつ、フレーム強化とアウトラインの改修などを行いました。

 

※内容が多かったのですが無理に1ページに納めたため、縦に長いページになっております。

 

 

 

 

ここから制作風景です

ゼータおよびゼータプラスは大好きな機体で、これまで無印・MG・HGUC・PG・GKなど何十体も作ってきました。特にこのMGキットは個人的な思い入れもあって「MGベースで理想の完成品を作りたい」と思い、コツコツと作っていました。しかし理想が強すぎるせいで「完成しない病」にかかり、何年も一進一退を繰り返していました。

そんななか、久しぶりにMGゼータプラスの制作依頼をいただいきました。そこで今回は、現時点での改造ノウハウを整理して制作しようと考えました。

 

奥がノーマル、左が「完成しない病」の習作品、右が今回制作品です。

 

 

左はノーマル、右が今回制作品。

このキットは19年前に発売されたものですが、変形もプロポーションも非常に高レベルです。しかし複雑な変形機構のため関節グラグラで、どうしてもキレイな立ち姿になりません。ですので、最優先させるべきはしっかり自立させることだと思います。そのため制作内容のうち70%が、フレーム部分の改造になりました。

 

フレーム系の改造内容は、頭部(首)の位置変更、胸の張り出し角度変更、足の延長、頭頂高が高くなるなどが主な変化です。

フレームが決まれば安心してアウター(外観)に取り掛かれます。できるだけキットの良さを活かしつつ、アウトラインの修正やディテール追加を行いました。最終的な仕上がりは、最近作った MG Ex-S ガンダム Ver.1.5 とラインを揃える感じで仕上げています。

 

 

 

頭部の製作です。

左がノーマル、右が加工後です。センチネルらしくするため、アゴ・チンガード・フェイスなどのアウトラインを変更ました。

 

 

バルカンはキットのモールドを切り落とし、バルカン周辺の整形の乱れを修正。メタルパーツ用のクリアランスを作り、PPロングアポジ2-4mmを装着。

 

 

フェイスはスジボリ強化やアウトライン修正など。カメラアイはいつもはセンサーグリーンExを使うのですが、今回はブルー系の蛍光塗料で塗装しました。

 

 

頭部は接着やマスキング塗装などで時間がかかるので早めに手をつけました。

 

 

首はいったん切り離し、3.5mm後ろに移動。

 

キットでは細いレールでエレベーションする構造になっていますが、保持が弱く安定しません。ここではプラ版でブラケットを作り、本体側の新造フレームにシッカリ固定できるようにしました。

 

エリのパーツは強度は必要ないのですが、スナップフィットがきつすぎてフレームにストレスを掛けているので、嵌合を調整しスムーズに抜き差しできるように加工。

 

首のボールジョイントは自作パーツに変更。このボールジョイントは耐久性・耐摩耗性に強いエンジニアリングプラスチック素材をCNC切削で削り出しているので、精度も強度も非常に高いです。写真では伝わらないのが残念ですが、ヘッドパーツを動かすと全くガタがなくスムーズに動かせる、非常に気持ちの良いボールジョイントになっています。

 

ヘッドの位置の後退量です。また、首のボールジョイントは上下に動かせるようにしました。最下にして頭部を埋めるか、少し上げてアゴを引くか。どちらもセンチネル要素があるので、好みで調整できるようにしました。

 

 

ヘッド周りが完成しました。

 

 

次に肩の制作です。

金型劣化で面が荒れていますので、ほぼ全面を整面。同時にサイドジャケット先端のフチ薄加工、スリット追加などなど。

 

面構成において隣り合う面同士の切り替えがあいまいな構成が多いので、面の整理をし、独立したパネル表現にしました。

 

 

接着面がとても荒れているので、粗目に面取りします。こうすることで接着強度も上がり合わせ目消しも楽になります。こういった処理はほぼ全身に行っています。

 

以前に制作したときに「そのままでピッタリ」とメモしてあったので、そのまま組み立てたらポリキャップが潰れてしまった。ガンプラは1年〜3年くらいで金型改修があるみたいなので、古いノウハウは崩れる場合があります。

 

ポリキャップは予備の新品に交換。ポリキャップの受け穴は丸ビットで面取り。こうすることで強度を落とさずに、スムーズ確実に組み立てられるようになります。丸ビット必須です。

 

 

上腕は基本構造は変えず、アウターの形状を変更しました。

 

ヒジです。センチネル風人外体型では、ヒジが少し外側に曲がっているのが特徴です。これを再現するためフレームとアウターを加工し可動範囲を拡大しました。ここの角度はとても微妙なので、ベストな角度で固定にしました。

 

前腕。弱いモールドの強化やスリット加工を追加しました。

 

 

ヒジ側はスリット開口。手首側はスリットや開口など。

 

 

次に胴体の制作です。

スナップフィットが3重になっています。このまま組むとキツすぎてスキマができるし、分解しようとすると破損します。また3重の場合はピンカットやMKカットだと精度も強度も取れません。

スナップフィットは「初心者でも簡単に組める親切設計」ですが、きちんとした完成品にする場合は、スナップフィットは全て解除することになります。

 

 

3重のスナップフィットは、一つ一つ丁寧にサイズの合ったドリルで調整します。0.1mmでもスキマがあると失敗となるので、経験を積めば積むほど慎重で時間がかかる工作になります。こういう調整は全身にわたって施しております。

 

 

これから胴体内のフレームを新規に作ります。たくさんのパーツを固定するため複雑な構造になり、全部を記載してもかえって分かりにくくなると思うので、主要な部分だけを記載しようと思います。

まずは腰ブロック(明るいグレーの部分)です。変形のために4個の丁番・8個の可動部があります。キットでは摩擦で固定するためかなりキツくなっていて、何度も可動させると摩擦がすり減ってユルユルになってしまう。これを固定に変更します。

 

 

まず上面にブラケットをつけて左右の位置関係を固定。ここは板一枚でも良いのですが、あとで胸フレームと結合させるため積層にしてあります。

 

 

腰ブロック下端も中に浮いた構造になっているので、プラ板で延長ブラケットを作って位置固定。これで腰ブロックの位置固定ができたので、4枚の丁番はオミット。ついでに後ハメもできるようになりました。

 

 

つづいて胸フレーム。ここは腰・肩・背骨・胸・首の5つを支える一番重要なフレームになります。理想は論理値なのですが、実際にやってみるとピッタリになることはありません。なのでまず現場合わせで仮制作し、それを元に計算で微調整したものを新規作り直し、また計算して作り直し、を繰り返します。

 

 

非常に長い工作なので途中省略して、おおむね構造が決まった状態です。この周辺だけで20箇所くらいの可動部がありますが、全てこのフレームに固定になります。そのため工作途中はどんどん複雑な形になっいましたが、最終的にはできるだけシンプルに整理したものに作り直しました。

 

 

各部の役割を簡単に説明します。
・紫は首のエレベーションと前後左右位置を固定。
・青は背骨やコクピットなど前後左右上下6面を固定。
・緑は肩上面と胸を固定。
・赤は背骨と腰ブロックを固定。
・オレンジは肩フレームを固定。

 

 

肩の構造。左から、赤四角はWR時のウイング固定ラチェットなので今回は不必要。緑丸は肩プレートを固定するものですが、位置決めも保持も不安定です。というわけでこのパーツは全部取り外し、新規フレームを制作。ポロポロと外れやすい肩プレートをガッチリ固定にしました。

 

 

胸のパーツは、背中から6箇所の接合部を経ての保持なので、とうぜんフワフワしています。中心のフレームも変形のためには非常にスバラシイ設計なのですが、そのぶん固定力はどうしても弱い。そのさらに先に着くコクピットも当然弱い。

 

 

フレーム&接続部は全てオミット。ここでは胸の下の左右のパーツのスタビライザーを取り付け。プラの肉厚が小さいので極小精密ネジが必須です。

 

 

加工のための肉厚が少ないのが、とても難しい。平面が少ないのも難しい。

 

胸の上面のフレームパーツも、位置が落ち着かないパーツです。これを自作フレームにネジで固定。

 

胸のパーツの角度が跳ね上がりました。白いダクトの水平、胸横スジボリの垂直などのジオメトリを揃えると、整理された感じになります。

 

メインフレームが完成。股間、腰、脇腹、コクピット、胸、首、肩、背中、テールスタビライザーなどがメインフレームに固定され、この状態でガチガチ安心の強度です。こういった改造結果は、写真では伝わらなのが残念です。

 

 

コクピット。背中からジョイントジョイントの連続で、8ジョイント目(?)でこのコクピットになります。とうぜん不安定。既存のフレームから完全に独立させ、自作したメインフレームに直接固定できるようにします。

 

コクピットブロック(黒部分)はプラ材でブラケットを作りました。これがメインフレームに固定されます。

コクピットハッチ(灰色)はその役割上肉厚が薄く、これから様々な加工をするための強度がたりません。なのでフレームの一部を切り取ってハッチ側に固定し強度を確保します。ついでにフレームとハッチを後ハメできるように加工しました。

 

 

コクピットハッチのフレーム部が決まりました。次に胸の張り出しに合わせてハッチの前後上下位置の微調整のためシムを挟みます。

 

キットには変形のための開口部とフレーム露出があります。フレームをディテールアップする表現方法もあるのですが、この機体とこのキットは美しい曲面美を持っていますので、それを活かすような構成にします。パテで埋めて、胸上面へラインをつなげます。

 

 

コクピット上面と胸中央上面の面法線の角度が揃うようにする。さらにこの法線と頭部の軸を揃えると、美しいアウトラインになる。

 

 

上半身が決まりました。

 

 

次に股間の制作です。やはり変形機構のため色々な制限があります。一番の改善点はQファクター(股間の幅)の狭さです。

 

 

ゼータプラスは過去30機以上制作してきました。経験上、普通に作っても破損しやすいパーツがいくつかあり、この股間パーツもその一つです。そういった不安定なパーツは予備を持つようにしています。失敗した工作を書くと何倍にも長くなってしまうので失敗の説明は省略してますが、声が出るほどの失敗をすることも少なくないです(余談でした)。

 

 

改造に入る前に、基本的な処理をします。このキットは設計も金型も素材も古いので、フィッティングが辛い部分が多いです。合わせ面やダボ等は念入りに処理します。完成後や写真では見えない部分ですが、ここをしっかり処理した完成品は「手にとったときの安心感」があります。

 

 

股間パーツのメインの保持がポリキャップ、そのため位置も強度も不足。ポリキャップは取り外し、ネジだけで固定していきます。

 

以前はクサビ型のブラケットを挟んでQファクターを広げていました。足を広げるには理想的なのですが、接合面がナナメだと強度と位置決めの精度が論理的にほんの少し落ちる。精神的なものかもしれないが。

 

 

最近はプラ板を挟む方式に落ち着いています。幅の広さの微調整が0.1mm単位でできるのと、やはりシンプルな構造が良いです。ここと同時に太ももの関節を調整することで、足を広げられるようにしています。

 

Qファクターの幅増し、ジョイント位置の微調整、強度の確保ができました。

 

 

 

以上でフレームが決まったので、ここから外装とディテールに取り掛かります。

左側がノーマル、右側が加工中。このキットでは「一体成型パーツを加工して別パーツに見せる」というディテールアップが有効でした。

 

 

キットのアウトラインは維持しつつエッジを整えたり、細かいディテールを足していきます。

 

 

胸ダクトの奥のパーツ、ノーマルでもベクター式ディテールがあるのですが、パーティングラインと厚さがネックです。ここはいったん薄く成形して、組みながら様子を見ます。

 

 

腰ブロック。後ハメができるようになったので、加工がしやすくなりました。

 

リアアーマーは特に問題なく、微調整とディテールアップを行いました。

 

途中写真。

 

 

 

次は足です。

これはあくまで個人的な感想ですが・・・最近のMSやVer2アレンジは直線的で細長くしただけ、あるいはディテールを増やしただけの安直なデザインが多いのが残念。ゼータプラスは元デザインもキットも、複雑で美しい曲面で構成されています。この特徴は活かしたいとおもいます。

 

 

ただし古いキットなので面のつながりが悪かったりバンダイエッジも強めなので、ほぼ全面を(裏側まで)整面しました。

 

 

足のパーツ分割はアムロ専用A1の赤白の塗り分けを再現するための金型になっています。そのためC1では不要な部分に合わせ目がきてしまう。接着してから後ハメか、マスク塗装か、どちらも一長一短があるので悩みます。

 

 

キットでは肉厚段差があります。ここはツライチにする作例もありますが・・・

 

フチを薄く削ってレイヤー構造にしました。

 

 

ノズルカバー(白いパーツ)は複雑な一体成型になっています。4面がつながったこのデザインも悪くないのですが・・・

 

適度に分割し、フチを薄く加工しました。

 

よりベクターノズルっぽくなりました。

 

 

足の内側。ここもA1型の塗り分けラインが邪魔になっています。接着して合わせ目消し。中央のフィンを切り離し、ディテール追加などなど。

 

 

それぞれのパーツが独立してる感じになりました。

 

 

足の内側の四角形は一体成型。基本的には悪いところはないので、面取りやディテールなど追加。

 

 

古いキットなのでヒケが多い。ついでにバランスの悪いディテールはオミット。

 

パネルラインやディテールを追加、塗り分けラインも変更しました。

 

 

足裏のディテールは設定に忠実で精度も良いです。足裏内部にネオジム磁石を内蔵するため、あまり手を加えずに強度を優先しました。

 

 

バンダイエッジの処理やフチ薄加工など。

 

 

太もも。曲面の繋がりがぎこちない部分があるので、強めのヤスリで面の流れを整えます。スリットを追加したり不要なディテールを埋めたり。

 

太ももの裏側。断面のような平面と周りの曲面との繋がりが悪いので、カットしてシェイプして整えました。

 

 

一体になっているヒザと太ももを切り離し、面取りを整えてディテールを追加。ヒザの取り付け位置の微調整。

 

ヒザ関節フレームはバリが多いのでキレイに整面。グレー数色で塗り分けて、ネジと接着剤で固定。

 

ふくらはぎ上部のインテーク(白パーツ)はスリットを追加。

 

 

足がほぼ完成。

 

 

太もも上部(腰脇)にマウントされるビームカノン。ノーマルでも凝ったパーツ分割でディテールも良好。さらにスリットやディテールを追加しました。

 

 

 

バックパックのブースターです。面取り、ブロック分割、フチ薄加工、スリット加工、ディテール追加、などなど。

 

キットでは面取りやラインの流れが曖昧です。個人的希望ですが、ぜひVer.2かVer.Kaでリニューアルしてほしいです。というわけで、今回はほぼ全ての面と線を整理しました。

 

 

テールスタビライザーのマウント。可倒式になっていますが、ラッチが弱く保持ができません。不要なリブを切り取り、背中との接合面を合わせ、ネジで固定。

 

 

テールスタビを接続するポリキャップは応力が悪い方向に働くので、何もしなくてもポロっと外れてしまいます。ここは長ネジ貫通固定に変更して機械的結合にしました。あとは塗り分けライン、スリット、スジボリ、ディテールなどなど追加。オレンジ色は少し彩度を高めにして、全体的なロービジビリティカラーに対するアクセントにしました。

 

ゼータプラスやVMsAWrsなどデカールデータは既に持っていますが、今回はほぼ全面リニューアルしました。

 

 

バックパックが完成。

 

 

主翼です。変形可動のためポリキャップ一軸(x2箇所)での接続ですが、やはりグニャグニャしてしまいます。WRのために設けられたクリアランスをプラ版やプラパテで埋めて、フレームを面で支えて固定できるようします。

 

 

安心の構造になりました。

 

 

燃料タンクはホワイトで塗装し、オレンジ色のデカールでアクセントを加えました。

 

 

シールド&ライフルの制作です。

レドームセンサー。スジボリやディテールを強化、数色で塗り分け、丸皿モールド・レンズ・メタルパーツ・デカールなどなど。

 

 

センサーは頭部と同じ蛍光系ブルーで塗装。

 

 

変形の制限からか可動部が片持ちになっています。そのせいで微妙に左右対称が崩れます。今回はMS形態固定なので片持ち部はオミットし、ネジやメタルパーツで固定しました。

 

 

シールドのデカールも新規作成です。

 

 

マズル周辺のバリを処理し、肉厚がある部分はフチ薄加工。フランジ面の整面と面取り、メタルパーツ取り付けなど。

 

 

 

ディスプレイベースです。

今回も単独で自立可能に仕上げてあります。しかしデザイン上どうしても後ろバランスになるため、ディスプレイベースも制作しました。黄色い矢印が前を指してます。中段左右の丸がネオジム磁石です。

 

足裏にネオジム磁石が仕込んであります。足の開き具合はだいたい80度前後がちょうどいいです。

 

上面からは磁石の位置がわからないので、磁石の位置にステンレスボールを埋め込みました。磁束の強いネオジム磁石なので近づければ固定できます。また、足裏に磁石が埋まっているので、ディスプレイベースじゃなくても薄い鉄板などにも固定することができます。

 

 

 

アクションベースに空いた穴には、ステンレス製のパーツを埋め込んで塗装してあります。これを埋め込むことで重量が増え、より安定したディスプレイにできます。

 

 

 

 

 

長年「いつかは・・・」と思っていた機体が、ようやく完成できて嬉しいです。

 

 

 

今回の制作で使用したメタルパーツとPPカラーセットを【ぷらもぷらす】で販売してます。デカール購入希望の方は直接メールください。
最後まで観て頂いてありがとうございました。 みなさんの感想やリクエストが僕の製作の励みになっています。 よろしかったら気軽にメールなどくださいませ。

みなさまに、楽しい模型ライフを!